大空へのあこがれ。それは地上の生きづらさの裏返しである!【適菜収】
【連載】厭世的生き方のすすめ! 第15回
■第三の道という選択肢
かつて話題になったワイドショーのコメンテーターがいた。元刑事の田宮榮一氏が描く犯人像は範囲が広かった。「犯人は20代から30代。もしくは40代から50代」という有名なコメントが残っているし、2008年の元厚生事務次官宅連続襲撃事件については「複数犯か同一人物の犯行」、2009年の中央大学教授刺殺事件については「内部、もしくは外部の者の犯行」「犯人は男性といわれているが、女性である可能性も否定できない」と予測した。
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「東のほんこん」の異名を持つ自称国際政治学者三浦瑠麗の予言もそれに近い。ロシアのウクライナ侵攻については「どこで悟って、どこで引き返すのか。引き返さないという選択肢もプーチンにはある」と発言。そりゃ、進むか引き返すかのどちらかしかないからね。新型コロナについては延々とピークアウトを予測し続けた。「来週ピークアウトする」と言っていれば、いつかは当たる。
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某陰謀論者が言っていた。「とりあえずたくさん予言しておいて、当たったものだけ的中したと宣伝すればいいんです」。
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10年くらい前だったか、某政治学者の文章に大きな衝撃を受けた。だいたい次のような論旨である。
「Aという現象に対して、Bという意見とCという意見がある」
「BとCは対立しているが、その議論は不毛であり、私はBにもCにも賛同しない。なぜなら第三の道があると信じているからだ」
文章はここで終わる。
え?
その「第三の道」については一行も触れられていないのである。よくもまあ、こんなアホな文章を公にできるなと思ったが、考えてみれば、同レベルの文章は日々世の中に垂れ流されている。ちなみに、そいつもインコみたいな顔をしている。
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こうした地上的なくだらなさも、高い場所から見れば、やさしい目で眺めることができる。ミミズだってアメンボだって三浦瑠麗だって、みんな必死になって生きているのであり、大切な友達なのである。
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たしかに地上は息苦しい。しかし嘆いてばかりでは仕方がない。幻想の過去に安住するのか、それともこのまま地獄の未来へ突き進むのか。私は第三の道があると信じている。
文:適菜収
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