大空へのあこがれ。それは地上の生きづらさの裏返しである!【適菜収】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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大空へのあこがれ。それは地上の生きづらさの裏返しである!【適菜収】

【連載】厭世的生き方のすすめ! 第15回

 

■第三の道という選択肢

 

 かつて話題になったワイドショーのコメンテーターがいた。元刑事の田宮榮一氏が描く犯人像は範囲が広かった。「犯人は20代から30代。もしくは40代から50代」という有名なコメントが残っているし、2008年の元厚生事務次官宅連続襲撃事件については「複数犯か同一人物の犯行」、2009年の中央大学教授刺殺事件については「内部、もしくは外部の者の犯行」「犯人は男性といわれているが、女性である可能性も否定できない」と予測した。

   *

 「東のほんこん」の異名を持つ自称国際政治学者三浦瑠麗の予言もそれに近い。ロシアのウクライナ侵攻については「どこで悟って、どこで引き返すのか。引き返さないという選択肢もプーチンにはある」と発言。そりゃ、進むか引き返すかのどちらかしかないからね。新型コロナについては延々とピークアウトを予測し続けた。「来週ピークアウトする」と言っていれば、いつかは当たる。

   *

 某陰謀論者が言っていた。「とりあえずたくさん予言しておいて、当たったものだけ的中したと宣伝すればいいんです」。

   *

 10年くらい前だったか、某政治学者の文章に大きな衝撃を受けた。だいたい次のような論旨である。

 「Aという現象に対して、Bという意見とCという意見がある」

 「BとCは対立しているが、その議論は不毛であり、私はBにもCにも賛同しない。なぜなら第三の道があると信じているからだ」

 文章はここで終わる。

 え?

 その「第三の道」については一行も触れられていないのである。よくもまあ、こんなアホな文章を公にできるなと思ったが、考えてみれば、同レベルの文章は日々世の中に垂れ流されている。ちなみに、そいつもインコみたいな顔をしている。

   *

 こうした地上的なくだらなさも、高い場所から見れば、やさしい目で眺めることができる。ミミズだってアメンボだって三浦瑠麗だって、みんな必死になって生きているのであり、大切な友達なのである。

   *

 たしかに地上は息苦しい。しかし嘆いてばかりでは仕方がない。幻想の過去に安住するのか、それともこのまま地獄の未来へ突き進むのか。私は第三の道があると信じている。

 

文:適菜収

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適菜 収

てきな おさむ

1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171

 

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